モラハラとパワハラの決定的な違い
モラハラは「精神的な攻撃や支配」を指し、職場だけでなく家庭・恋人・友人など、どんな関係性でも起こりえます。
一方パワハラは、職場における優位な立場の人によるハラスメントに限定されます。
判断のポイントは次の2つです。
- 場所：職場か、それ以外か
- 立場：上下関係や業務上の権限があるか
この2つを軸に考えると、自分が受けているのが「モラハラ」なのか「パワハラ」なのかが整理しやすくなります。
パワハラとは？職場で起こりやすい6類型
厚生労働省が示す6類型は、パワハラを判断する最も信頼できる基準です。
身体的攻撃
・叩く、机を蹴る、物を投げつけるなど
→ 暴力行為は一度でも問題になるケースが多いです。
精神的攻撃
・怒鳴りつける、侮辱する、人格否定の発言
→「みんなの前で恥をかかせる」などが典型。
人間関係の切り離し
・無視、隔離、会議から外す
→業務に必要な情報が与えられない状態。
過大な要求
・こなせない仕事量を押し付ける
・新人に不可能な業務を与える
→「できないのが悪い」という圧力も含む。
過小な要求
・一切仕事を振らない、雑務ばかりさせる
→能力を発揮させない意図があるケース。
個の侵害
・私生活への干渉（交際、家族、プライベートの詮索）
パワハラ成立のポイント
- 相手が優位な立場にある
- 業務上の必要性を超えている
- 継続的・反復的に行われている
モラハラとは？家庭・恋人・職場で起きる精神的支配
モラハラは“言葉や態度による精神的な暴力”です。
特徴は、目に見えない支配 がじわじわと積み重なる点にあります。
モラハラの典型的な行為
- 無視する
- 機嫌で態度を変える
- 過度に欠点を指摘する
- 相手のせいにして追い込む
-「お前のためだ」と言って支配する - 束縛、過干渉
家庭・恋人間で多い理由
・外部の目が入らず、関係性が固定化しやすい
・情緒的なつながりが強く、支配されても気づきにくい
モラハラが気づきにくい心理
- 「自分が悪い」と思わされる
- 少し優しい時があり混乱する
- 加害者が“正当性”を語るため反論しづらい
【図解】パワハラとモラハラの一覧比較（文章版）
| 比較項目 | パワハラ | モラハラ |
|---|---|---|
| 起こる場所 | 職場のみ | 家庭・恋人・職場など全般 |
| 加害者の立場 | 上司・先輩など優位 | 誰でも（上下関係問わず） |
| 主な行為 | 業務上の攻撃・嫌がらせ | 無視・支配・人格否定 |
| 性質 | 業務の範囲を逸脱 | 精神的支配・長期化しやすい |
| 法律の枠組み | 労働施策総合推進法など | DV防止法・損害賠償など |
| 相談先 | 労働局・社内窓口 | DV・家庭相談、弁護士 |
表にすると、「場所」「立場」で明確に違うことがわかります。
モラハラはパワハラの一部？
モラハラは「精神的な攻撃」であるため、職場で起きる場合はパワハラに該当することがあります。
重なりやすい例
- 上司が特定の部下を無視する
- 人前で人格否定を繰り返す
- 不機嫌で支配し、業務を妨害する
家庭や恋人関係ではパワハラには該当しませんが、同じくらい深刻な被害が残ります。
裁判例から見る「精神的攻撃」の判断基準
裁判では以下のようなポイントが重視されています。
●裁判で違法とされた例（実際の判例傾向）
- 毎日のように暴言を繰り返した
- 長期間の無視で精神的な負担を与えた
- 人前で侮辱し、名誉を侵害した
●判断基準
- 回数・期間：継続的であるか
- 強度：どれほどの精神的苦痛を与えたか
- 影響：うつ状態や体調悪化につながったか
どれか1つではなく、総合的に判断されます。
【注意】気づきにくいモラハラのサイン
モラハラはゆっくり進むため、被害者ほど気づきません。
代表的なサイン
- 相手の顔色で行動を決めてしまう
- 理由のない罪悪感がある
- 反論すると逆ギレされる
- 相談しても「大げさ」と否定される
- 自信をなくしていく
“おかしい”と感じた時点で、すでに被害が進んでいるケースも多いです。
自分はどちら？セルフチェック
以下に当てはまる項目が多いほど注意が必要です。
●職場
- 上司や先輩からの叱責が異常に多い
- 無視や孤立化がある
- 業務と関係ないことまで責められる
→ パワハラ（精神的攻撃型）の可能性
●家庭・恋人
- 無視、感情的な支配
- 常に相手を優先しないと怒られる
- 否定され続けて自己価値が下がる
→ モラハラの可能性
対処法（モラハラ／パワハラ別）
●共通
- 日付・状況・言動を記録する
- 感情ではなく「事実」で整理する
- 身近な人に相談して孤立を避ける
●職場（パワハラ）
- 会社の相談窓口の利用
- 労働局の相談（無料）
- 精神的ダメージがあれば産業医へ
- 証拠を活用して弁護士相談
●家庭・恋人（モラハラ）
- DV相談窓口（男女とも利用可能）
- 自治体の心の相談窓口
- 安全確保が最優先
- 距離を置く、別居など選択肢を把握
相談先まとめ
目的別にまとめると以下が利用しやすいです。
・労働局：職場のハラスメント全般
・社内ハラスメント窓口：まず最初に相談しやすい
・弁護士：法的措置の判断が必要な時
・DV相談ナビ（#8008）：家庭・恋愛のモラハラ
・自治体の相談窓口：生活面のサポート
・SNSの匿名相談：話を聞いてほしい時の初期相談
【まとめ】違いを理解すれば、あなたの状況が判断できる
モラハラもパワハラも、共通して精神的ダメージを与える深刻な問題です。
違いを知ることで、
「自分が受けているのはどちらなのか？」
「どこに相談すべきか？」
が整理され、具体的な行動に移しやすくなります。
あなたの心と身体を守るため、つらさを一人で抱え込まないことが何より大切です。
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